講義詳細
技術力強化コース(2025年度)
腐食を考慮したプラントの安全運転(リモート)
日時 |
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定員 | 20名 |
場所 | 地図はこちら |
料金 | 48,400円(税込み) |
概要1
科目概要:
日本のコンビナート設備は高経年化が進み、老朽化して近年事故件数が増加しているのが実情である。特に水島コンビナートを含めコンビナート事故の半数以上が腐食に起因するものである。
そこで本科目では、「腐食を考慮したプラントの安全操業」を目標に、主に機械・プラント等の設計、製造、運転、保全等に係わる技術者を対象にして、腐食の基礎と「化学工学的視点(流動及び伝熱)からの腐食と防食」について事例中心に研修し、機械・プラント保全のための技術及びノウハウ構築を図る。
研修目標(科目全般)
1. 目標の方向:機械・プラント等の安全運転に向けて保全のための技術及びノウハウ構築を図り、機械・プラント等に係わる技術者(スキル度ランク3)の育成を目指す。
2. レベルアップの目標:スキル度(*) ランク2→ランク3
(*)ランク0 腐食防食の基礎知識及び技術・ノウハウ全然ない
〃 1 〃 〃 多少ある
〃 2 〃 〃 ある程度ある
〃 3 〃 〃 かなりある
〃 4 〃 〃 指導できる
3.基礎知識習得のための資料を準備する。
対象とする研修参加者
腐食環境にある設備において設計、製造、運転、保全等に従事する技術者
(1) 主対象者:化学及び石油化学プラントの運転、設備保全に従事する者
(2) その他の対象者:(1)以外の設備において設計、製造、運転、保全等に従事する技術者、工事会社の技術者等、
当科目の特徴
1. 研修内容を「腐食を考慮したプラントの安全操業」に絞り、機械・プラント等の設計、製造、運転、保全等に係る技術者を対象に「化学工学的視点(流動及び伝熱)からの腐食と防食」について技術とノウハウ構築を図る。
2.受講者の受講前スキル度及び狙うべきスキル度を明確化したこと。
3.設備の高経年化、老朽化による事故を防ぐため、腐食防止の重要性を再認識し、機器の寿命評価法について学ぶ。
4.機器の損傷事例から防食管理のノウハウについて学び、腐食問題を解決する能力を向上させる。
研修に必要な期間:
受講期間2日間:90分×8コマ+45分×1コマ
第1日9:00~17:30、第二日9:00~17:30)
受講生数:20名
講師:
熊田 誠(工学博士、元三井造船技師長、元山口大学工学部応用化学工学科教授、
東西化学産業(株)顧問、岡山商工会議所高度技術者集団会長、腐食防食学会中国四
国支部顧問)
研修方法:座学とスタディ(簡単なミニテストと演習)
概要2
コマ1:腐食事故の要因分析
研修目標:コンビナート事故の要因を分析し、腐食事故の原因を探る。
従来と比較した新規性:コンビナート事故の要因と腐食事故の原因を知り、保全の重要性を体 得する。
コマ2:腐食の基礎(1)
研修目標:腐食の基礎(1)として、
① 腐食形態と腐食の原理と、
② 腐食機構を学ぶ。
従来と比較した新規性:腐食の原理と腐食機構を習得する。
コマ3:腐食の基礎(2)
研修目的:腐食の基礎(2)として、
① 腐食に及ぼす影響因子と、
② 機械・プラント等で頻繁に発生する主な腐食について学ぶ
従来と比較した新規性:機械・プラント等で発生する腐食トラブルの発生要因として考えられる影響因子を理解する。腐食トラブル事例を元に分析し、そのトラブルの原因になる主な腐食を理解する。
コマ4:流動腐食
腐食トラブルの中で配管腐食が最も多い。そこで流動腐食で配管腐食について学ぶ。
研修目標:
① 流動界面の構造を理解し、流動状態における拡散支配の電気化学について学ぶ。
② 流動界面における腐食(腐食における物質移動)として、
A) 配管(直管、曲管)やポンプにおけるエロージョン、
B) 流れ加速型腐食などについて学ぶ。
従来と比較した新規性:従来の講義では行われていない拡散支配の電気化学を習得する。界面における層流、乱流状態による腐食のほかに、流れ加速型腐食についても習得する。いくつかのエロージョン事例から発生要因と対策について学ぶ。
コマ5:伝熱面腐食
熱交換器、ボイラ等における腐食の基礎と伝熱面における腐食(スケールと腐食)を学ぶ。
研修目標:
① 固体壁付近の熱移動と伝熱曲線について学び、
② 熱交換器、ボイラ等伝熱界面で起こる腐食の機構を理解する。
③ ボイラにおける水側腐食のほか、
④ 伝熱面でしばしば発生する気泡による腐食、
⑤ 熱点腐食、
⑥ アルカリ腐食
⑦ 水素侵食について腐食原理と形態、腐食事例と対策、について学ぶ
従来と比較した新規性:現象的に理解していた伝熱界面の腐食を理論的に理解する。ここで学ぶ腐食はボイラ等伝熱面でしばしば発生するが、腐食原理を理解することが対策につながる。
コマ6:機器の寿命評価
ここでは腐食が関与した場合の機器の寿命評価法について学ぶ。
研修方法:
① 全面腐食に対する腐食率による評価法、
② 孔食等局部腐食に対する極値統計による寿命評価法、について学ぶ。
③ 極値統計法では演習を行う。
従来と比較した新規性:局部腐食の寿命評価は非常に難しい。しかし②孔食の場合腐食速度が大きく、機器へのダメージが大きい。したがって局部腐食に対する極値統計による寿命評価法を学ぶことは大きな意義がある。
コマ7:プラントにおける腐食の分類、腐食事例、と防食対策
プラントでどのような腐食が発生しているのか、機器別、腐食別で理解する。次に最近腐食の
問題点として取り上げられている配管の腐食について構成部材、発生する腐食と劣化現象につ
いて学ぶ。配管の腐食は事故率が高く、対策は残された課題である。さらにエロージョン、伝
熱面などでの腐食事例と防食管理のノウハウについて学ぶ。
研修方法:
① プラントにおける腐食について、機器別、腐食別に分類し、次に
② 配管に生じる腐食劣化現象、 について学ぶ。
③ 腐食事例と防食対策では防食構造設計、
④ 腐食事例改善策では伝熱問題(二相ステンレス鋼の孔食事例と使用上の注意点)、
⑤ 保温の問題、隙間構造部の問題、配置に対する配慮、配管の腐食、プラント管理について学ぶ
⑥ 腐食事例として、エロージョン、伝熱面腐食について学ぶ。
⑦ さらに種々のプラントで発生した腐食事例の要因を明確にして腐食対策について学ぶ。
従来と比較した新規性:プラントの腐食を機器別、腐食別に学ぶ。さらに近年問題になっている配管腐食と劣化現象を理解し、最後にエロージョン、伝熱面での腐食事例について学ぶ。さらに防食構造、腐食対策について学ぶ。
コマ8:腐食事例に学ぶ防食管理の問題解決
研修目標と従来と比較した新規性:事例解析による問題解決手法についてそのノウハウを学ぶ。
① 材料の取り違え
② 熱処理等の管理不十分
③ 粒界腐食を受けた材料
④ 応力腐食割れによる鋭い切り欠き材
⑤ 回転乾燥機のすき間腐食と熱疲労の繰り返しによる腐食疲労破壊、
⑥ ハステロイC試験容器の応力腐食割れ、
⑦ 多層ベローズの応力腐食割れ、
⑧ 配管の突き合わせ溶接不良箇所(すき間)から生じたすき間腐食、
⑨ クーラーチューブの応力腐食割れ、
⑩ 冷却水の異常流量によるクーラーチューブの腐食疲労破壊、
⑪ 蒸留装置配管の局部腐食、
⑫ 高圧配管の局部腐食、
以上の事例解析からノウハウを学ぶ。
コマ9:腐食事例に学び腐食問題の解決力を向上させる
腐食の基礎を学び、腐食事例からトラブル解決のヒントを得ても、実際にトラブルを解決でき る能力が向上しなければプラントの安全運転を達成出来ない。ここでは腐食事例からいろいろな腐食問題解決のノウハウを学び、その能力を向上させる。
① 初めに、チタンの腐食事例ではチタンの水素脆化事例を例に、き裂の進展と材料破壊について学ぶ。
② 次に、最近問題になっている保温材下腐食(CUI)の解決策の現状と課題について学ぶ。この中で、比較的作業が容易な中性子水分検出計によるCUI検出について学ぶ。
③ さらに、重大事故が起きる理由はこれだ!!について学ぶ。重大事故が起こる要因は職場における安全意識の低下が大きい。いかに重大事故を防止するか、などについて学ぶ。